『森の家』/千早茜 ○

千早茜さんは孤独を書くのが上手な作家さんだなぁ、と思ってたのですが、本作『森の家』も、孤独で人との距離の取り方がわからない3人の男女の物語です。
2013年初の読書は、淋しさの中で、それぞれの孤独がひっそりと息づいているような、静かな物語でした。

ただね~。私、千早さんの甘美で仄暗い感じの漂う幻想的な物語の方が好きかな~。
現代の現実的な物語は、ちょっと物足りなかった。それぞれの淋しさがふわふわと漂う雰囲気は、良かったんだけどね。

美里・佐藤さん・まりも君の3人が一緒に暮らしている、住宅街の中にありながらうっそうとした木々に囲まれている家。まるで、静かな森の中にひっそりと身を隠しているかのような、家。
美里と佐藤さんは年の離れた恋人同士で、佐藤さんとまりも君は親子(だけど訳アリ)。家族のように暮らしている。
だけど、3人は何かが欠けていて、人との距離の測り方がわからない。それでも危うい均衡の中、緩やかに暮らしていたはずだった。
ある日、佐藤さんが失踪してしまうまでは。

美里・まりも君・佐藤さんの目線で、それぞれの状況が語られる各章。
美里の子供みたいな感情の起伏激しさと、爆発した後の倦怠感の落差に、ちょっと疲れました…。同じ女性として、感情移入するより、逆に振り回された感じ。
まりも君はまりも君で、20歳とは思えないほどの落ち着きっぷり。彼もまた、家族を持たない子供として、幼い頃から冷めた目で周りと係わってきたから、自分から欲するという事を知らない。
佐藤さんは・・・駄目だよねぇ、この男。いろいろ事情はあるんだけど、それでも、駄目でしょう…。
血の繋がりがあるかどうか分からなくたって、十年以上一緒に暮らしてきた被保護者と自ら同棲に誘った女性を、何も知らせず感じ取らせることもなく置いて来ちゃ駄目だよ…。

佐藤さんがさりげなく姿を消し、あっさりと付き合っていたはずの美里が爆発し、それを淡々と受け流すまりも君。だけどね、20歳前の未成年が、しかもずっと色々溜め込んできたような子が、平静でいられるわけがない。その奔流がいつ堰を切るかと、ちょっと怖かった。いや・・怖いというより、可哀想というか切ないというか。
ちょっと変わった母親が亡くなり、現れた父親らしき男性(佐藤さん)も家族として保護者として、欠けている。ずっと我慢して、表面上受け流して、人との距離の測り方を身につけられないままの、まりも君。もう子供じゃないけど、可哀想だなぁと思います。

とある田舎町の、青く深く底の見えない湖。そこで過去を思い出して夢にうなされ、湖の水に浮かぶまりも君の母・果穂子を幻視し、幻に捕らわれる佐藤さん。その佐藤さんを引き戻したのは、美里。
この後、あの家に戻って、3人は暮らしていくのだろう。お互い、足りないところを許しながら(補うことはないだろう)、受け入れながら、「家族」として。
温かい終わり方、という事ではないけれど、希望は見える終わり方でした。

ところで、どうやって美里は佐藤さんの居所がわかったんですかねぇ。現れ方が唐突で、結局最後まで何もそれについて語られなかったので、ちょっとそれだけ気になりました(^_^;)。

(2013.01.06 読了)

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この記事へのコメント

苗坊
2013年01月06日 22:35
こんばんは^^
確かに現代ものよりは昔のおとぎ話のような作品の方がインパクトがありますよね。
この作品も面白かったのですが、最後どうして佐藤さんの場所が分かったのかなーと思うとちょっとしっくりこなくて面白かった!とハッキリ思えないのが残念でした^^;
2013年01月06日 22:40
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
そうなんですよね、どうして佐藤さんの居場所がわかったのか?は、大いなる疑問なんですよねぇ。
何か手がかりになるような描写って、あったかしらん…それとも美里の感が冴えわたってた?!
すずな
2013年01月08日 12:56
確かに今までの作品と比べると物足りなさを感じましたね。
水無月・Rさんの「足りないところを許しながら」っていうのには、なるほどそうだなぁと思いました。あの3人なら”補う”ってことはなさそうですね。
私も美里が佐藤さんの居場所にどうやって辿り着いたのか、すごーく気になります!
2013年01月08日 23:06
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
ちょっと、物足りなかったですね~。
ラスト少し前(果穂子の幻視のあたり)は幻想的といえば幻想的でしたけど。

あの3人は、許しあうことで家族になっていくのかな~って思いました。

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