『ちゃんちゃら』/朝井まかて ◎

面白かった~!朝井まかてさんの前作『花競べ ~向嶋なずな屋繁盛期~』も面白かったんだけど、本作『ちゃんちゃら』は更に勢いを加えて来て、江戸っ子たちのべらんめえや心意気がとても心地よかったです。

前作でも「江戸の人って、園芸好きなのねぇ」と感心してたんですが、園芸だけじゃなく庭造りにも情熱を傾ける人がたくさんいたんですね。庭の作り方(方位方角や色々な作法や禁忌)などを指南する人(実際に庭造りをするわけではない)までいたという。植物の配置だけじゃなく、岩一つ、水の流れのひき方ひとつで庭の印象が全く違ってくるというのも、何となくはわかる気ではいましたが、読み進めると「うん、そうかも」と思えるぐらい確かな描写で、とてもよかったです。

それはきっと、主人公・ちゃらのいる「植辰」一家の庭に対する心意気の確かさから来るんでしょうね。腕が確かで心底作庭を愛している辰蔵親方、水の流れを読む巧者で小男の福助、庭石に関するエキスパートの玄林、そして辰蔵の娘で植辰一家を支えるしっかり者のお百合。他にも、昔植辰で修業をしていたが実家の船宿の船頭になった五郎太、植辰の懇意の施主の甥で身上がり侍(金子で幕臣株を買って侍になった元町人)の伊織、薬問屋の娘で目病みのお留都、疫病蔓延する庶民をを救おうと奔走する尼僧の妙青尼など、魅力的なキャラがいっぱい。

「ちゃら」という変わった名前は、ちゃらの「ちゃんちゃらおかしいや」という口癖から。もとは浮浪児で本名も年齢もわからないちゃらを「庭仕事は空仕事」と誘い鍛え上げた辰蔵、カッコいいですねぇ。
浮浪児時代も、いくつもの養家を飛び出していたちゃらだったけど、植辰には居ついた。もちろん、植木職人としての才能があり、きちんとそれが磨かれたからってのもあるけど、植辰一家の心意気の良さが、ちゃんとちゃらに響いたからなんだろうなぁ。良かったねぇ、って思います。

植辰一家が巻き込まれた、「嵯峨流正法」の家元・白楊の陰謀。例え美しくても、甘言や陰謀で人を弄し、悪事をはばからぬそのやり方には、本当に気分が悪かったです。確かな証拠を残さず、人手をかさに植辰に仕掛けてくる汚いやり口の数々。
それを耐え忍び、庭を作ることに真摯に向かい合う植辰一家の心意気と矜持が素晴らしかったですね。

疫病の流行、薬問屋を襲った庶民、人々の心身を操る白楊の陰謀、読んでいて胸が痛くなるようなことも多いのだけど、植物や岩や水の流れの描写など、心洗われるような自然の美しさが際立ちます。その自然の中を流れる風の匂いのことも、ちゃらが憧れる目病みの娘お留都の言葉から、私にすら感じられるような気がしてきました。

ちゃらが白楊のいる聖堂に乗り込んでいき、つかまって、脱出する過程で気づいたこと。岩組みの天才・玄林の素性と狂おしい思いからの道外れ、そして一時退場したちゃら。切なかったです。色々なことが。
だから、ラストにほっとしました。ちゃらが、ちゃんと大切なものがわかったこと。

そうそう、お百合を大事に思い、思うが故に数か月一緒にいてやり、その後で見合いをした五郎太が、すごく男前だったと思います!

(2013.07.20 読了)

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この記事へのコメント

2013年07月24日 12:44
江戸の職人の心意気や人情に胸が熱くなったり、サスペンス要素にはドキドキしたりと面白かったですね~。
どうなるんだろう…と思いましたが、ラストはホッと出来て本当に良かったですね!
2013年07月24日 23:13
すずなさん、ありがとうございます。
江戸の人の生活や考え方などが、鮮やかに描かれている作品でしたね~。
とても面白かったです。
2017年04月26日 12:11
五郎太、いい男でしたねぇ。そっちにしろ!そっちにしとけ!!と、何度思ったことか。
江戸の町衆の生活の様子も活き活きとしていましたが、サスペンスとしても作られていて、夢中で読みました。
最後の数行、ほんと、ほっとしましたね。
2017年04月26日 17:02
香桑さん、ありがとうございます(^^)。
そうなんですよ!五郎太の男前だったこと!私も「五郎太にすればいいのに…」と思ってました(^^;)。
サスペンス要素にハラハラしながら、ほっとするラストを迎えられたこと、よかったです~♪

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