『ワーカーズ・ダイジェスト』/津村記久子 ○

うわ~、なんだろう、このあるある感…。
正社員・派遣社員時代を思い出しました。津村記久子さんのお仕事小説って、なんでこんなに刺さるんだろうねぇ(^_^;)。事務系で会社勤めしてたの、もうずいぶん昔の話なんですけどねぇ。
『ワーカーズ・ダイジェスト』。すっごく、そういう感じ。働く人たちの日常は、こんな風。
胸がざわつく感じがするけど、でも何故かホッとしたりもし、刺さる部分もあったのでした。

多分、「自分がいなくても仕事は回る」という焦りと微妙な安心を持ってたことがあるから、刺さるんだろうなぁ。
残念ながら、仕事のデキる女じゃなかったので、しかもデキる女になりたいなんて無謀な思いも抱いていたこともあるので、なんとも物悲しい気持ちと安堵に苛まれつつ、読んでました。
う~ん、刺さる刺さる(笑)。

代理で打ち合わせに現れた、二人の〈佐藤〉。生年月日も同じ、身長も同じぐらいの男女は、会社員という日常を過ごしながら、ふとしたことでお互いを思い出す。
2人の佐藤たちには、仕事上の問題や職場の人と上手くいかないことなどが時々発生し、解決したりできなかったり、落ち込んだり達観したり、それでも丁寧に真摯に「仕事」に向き合う。
物語の最後に、2人の佐藤は再会する。何があるわけでもない再会だけど、なんだか暖かい。

多分〈正しくない〉感想を一つ。
オンリーワンにもナンバーワンにもなれない、歯車のひとつでしかない自分を、許容できる物語だと、感じました。
私が自分に甘いだけかしら。
津村さんが言いたかったのは、多分こんなことじゃないんだろうとは思いますが。でも、歯車でもいい、丁寧に「仕事」を頑張ることで救われるってこともあると思ったのですよ。
〈普通の、日常〉だから、雷が落ちるような劇的な変化や、救世主が現れるようなことはないけど。
頑張ってる自分を認めることは、本当に頑張ってるのなら、ささやかな救いなのだと思いました。
だって、日常って、そういうモノじゃないですか。いろんなことが同時進行してて、それを一生懸命処理して、解決したりできなかったり、飲み込んだり、何もかもがスパーン!とキレイに片付くことなんてない。
それでいいという、気がしました。

大阪の地理を知ってると、より面白いです。
2人の佐藤が、結構な距離歩くのでちょっとびっくり。大阪の鉄道(地下鉄含む)って、駅同士や別路線への距離が異様に短かったりするので、私も歩くこと結構ありますが(笑)。
時々、大阪市地図を引っ張り出して見比べつつ読みました。

もう一つの短編「オノウエさんの不在」、実を言うとちょっとイライラしました。男女取り混ぜ3人で「オノウエさん情報」を交換してるけど、結局どうしたいという方向性もなく、ただひたすら情報を集めたり報告し合ったり。
結局オノウエさん本人は出てくることなく、でもなんだか存在感たっぷりで、3人にそれぞれ影響を残しての退社。
そこから、3人の新しい関係性が始まるのかも?という終わり方は、ちょっとほっとしました。

あ、そういえば。「ワーカーズ・ダイジェスト」の方に、スパカツという食べ物が出てきます。美味しそうですが、カロリー高そうで、でも一回ぐらい試しに食べた見たくなりました。
そんなことを思ってたら、たまたまなんですが、先日読んだ新聞に津村さんのエッセイがあって、その中で「運転試験場に「スパカツ」があった」というエピソードが書かれてました。行ってみるべきか・・・でもなぁ、その運転試験場、行く機会がないのよねぇ。ははは。

解説代わりの益田ミリさんの漫画が、「ワーカーズ・ダイジェスト」の一部を漫画化してるんだけど、すごく雰囲気が合ってます。同僚がそっけなくなったエピソードや「クレーマーはクレームを言うことを楽しんでることに気づく」エピソードなど、うわぁ…って思う反面、あるあるです。

会社勤めをしたことのある人は、あるよねこういうこと、仕方ないんだよね、でも仕事だし頑張るんだよね、って共感できる物語だと思いました。

(2016.03.08 読了)

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この記事へのコメント

yoco
2016年03月10日 01:34
こんばんは~
私、この本が津村さんの初読みだったんですが、ほんとあるある感がものすごくありますよね。
津村さんの本はヒーローの本とかじゃなくて、日常でこつこつ頑張る私たちの本なんだ、って思わせてくれる素朴さというか優しさというか・・・この肯定してくれる感じがすごく好きです。

私読んだのは単行本だったので解説がなかったんですが、ミリさんの漫画が載ってるなんて、その解説も読んでみたい気がします。
2016年03月10日 05:38
yocoさん、ありがとうございます(^^)。
その「あるある感」が安心できるような、切ないような。
割り切れないってことが非常にリアルでした。
どんな職種であれ〈働く〉ことの本質を突かれたような気がしましたね。

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