『ラギッド・ガール ~廃園の天使Ⅱ~』/飛浩隆 ◎

前作は一つの区界の崩落の1日を絶望をつぶさに描いた長編でしたが、本作は前作の前日譚など外伝的短編集。
飛浩隆さん描く、〈数値海岸(コスタ・デル・ヌメロ)〉にまつわる物語、『ラギッド・ガール ~廃園の天使Ⅱ ~』

多重現実・仮想現実・電子データの活用など様々な技術が非常に発展したリアルの世界、その技術から新しいVR技術で作られる新しいエンターテイメントリゾート〈数値海岸〉、幾多もある区界はお互いに干渉できない関係にあり、その中の区界の物語。
・・・正直言って、難しかったですよ~。なんせ「完全文系人間」なもので、ワタクシ。
そのくせ、AIとか〈機械〉と〈ひと〉の狭間の物語とかそこに漂う切なさとかそういう設定が大好きなので、sf部分についていけないながら雰囲気を楽しむことは出来ました。

「夏の硝子体」
〈大途絶(グランド・ダウン)〉から300年。〈夏の区界〉に漂着するようになった硝子体を巡る、ジュリーとジョゼの物語。
「ラギッド・ガール」
〈数値海岸〉の成り立ちを描く。
「クローゼット」
区界アイテム開発者・ガウリに執拗に襲い掛かる、存在。
「魔術師」
鯨を育成する区界で働く少年(ゲスト)の日々と、大途絶を起こした集団の真の意図。
「蜘蛛の王」
大途絶から170年。〈夏の区界〉を襲撃したランゴーニが育った、〈汎用樹の区界〉の終末。

いやあ・・・。
ホント情報量多いんですよ、とにかく。SF部分は難しいし(笑)。
前作では大途絶から一千年の時が過ぎているのですが、本作では〈数値海岸〉構想段階の時代(「ラギット・ガール」)から、ある程度利用されるようになったころ(「クローゼット」)、大途絶発生の瞬間(「魔術師」)、そして大途絶から170年(「蜘蛛の王」)、300年(「夏の硝子体」)と、様々な時代が描かれています。
それぞれの時代、VR世界、現実の世界、そこを行き交う者(開発者やゲスト)、区界間を渡れないAI達、渡る手段を得たAI達・・・。

一つ一つに言及してたら、とてもじゃないけど読めたものじゃなくなってしまうし、どうにも私の中でこの短編集は消化しきれてないというか理解が足りないことが多くて、文章にし辛いのですよ。

〈大途絶〉がなぜ起こったか、どのようにして起こったのか、そしてゲストが来ないのに電力供給が続いたわけは、わかりました。
人道的に問題ありますもんね。
〈コグニトーム調整不全〉という病気、現代ではありえないのか、それとも心理的な病気としてあるのかしら。その対処法であるとある処置とAIの親和性というのかな?親近感やシンパシーが、「情報的身投げ」による「監視」をはじめ、大途絶を生み出した。
切ないなぁ・・・。AI達も切ないし、症状を持ってしまった人たちも切ないし、数値海岸を経営している人たちにも、基本的には悪意はなかった。
でも、運命や状況が廻り廻って、こんな結果を生んだのですよね。

「ラギッド・ガール」の語り手で阿形渓に執着されていたアンナが、「クローゼット」ではガウリを追い詰める存在になるという立場の転換、怖かったですねぇ。どちらも自己顕示欲のような?所有欲のような?ものが肥大化してて、しかもそれを電子データとリアルをお互いに侵食しあいながら攻め込んでくるっていう・・・。
現代ではまだあり得ないことだけど、もしかしたらいつかこんなことが起こるかもしれないと思うと、本当に怖いですねぇ。
まあ、私みたいな凡人は、執着されるようなことは絶対にないとは思いますけど(笑)。

まだわからないことで気になるのは、「蜘蛛の王」で〈汎用樹の区界〉を脱出したランゴーニが、いかにして〈天使〉との対決をするに至るのか、ですね。あと830年ありますからねぇ。
〈天使〉とは何なのか?対天使戦における〈夏の区界〉を使った罠とは?
全てが終わったあと、多くの区界は、数値海岸は、そしてその外側?にあるリアルの世界は、どうなっているのか?

気になって、気になって、仕方がありません。
3作目は、連載中なんだそうです。書籍化が、楽しみですね。
次の作品でも、電子データと人との切なく美しい物語が繰り広げられることでしょう。

気付いたことが一つあります。
区界の物語の方が、リアルの世界の物語より、情緒があるような気がします。
AI達の方が人間よりも、一途で健気で互いを慈しみ合ってるように思えました。人の方が、非情でマイナス方向の執着が強くて。AIの方が純粋な存在なのかもしれません。

(2020.09.29 読了) 

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