『夜は終わらない』/星野智幸 〇

「一度入り込んだら抜け出せない 命がけの最期の物語」という紹介をみて興味が湧いて、読みたい本リスト入りしていた本作・『夜は終わらない』
星野智幸さんは初読みです。
男から金を巻き上げ、不要となれば容赦なく葬り去る結婚詐欺師・玲緒奈。男たちを消す際には、彼女を魅了するような物語を語らせるのが、玲緒奈のルール。
次々と不要になった男を消していく結婚詐欺師・・・現実でも、なんかそういう事件ありましたよねぇ。

いずれ殺す予定だった男の自殺、警察での事情聴取、そして玲緒奈はペットのフェレット・トリスタンを連れ、住んでいたタワーマンションを後にする。
トリスタンを埼玉の神社で放ったあと、信州の山の中に住む男・シュンジューの元を訪れ、「まだ生きたければ、私が夢中になれる話をしてよ」と促す。シュンジューの話は彼女を魅了することが出来ず、翌朝シュンジューはトイレで二酸化炭素自殺を図った体で、始末される。

玲緒奈は、地味に公団住宅で暮らすクオンの元へ。クオンにも「夜の間に物語を」と告げると、サラリーマンの傍ら街での「聞き屋」もしていた彼は魅力的な物語を語り出し、しかも夜明けとともに「続きはまた今夜」という。
クオンは何夜もに渡り微妙に玲緒奈のことを例えるような物語などを語り、玲緒奈は不本意ながらも物語を聞き終わるまでというルールは守っているうちに、物語と現実の区別がつかなくなっていく。

数人を始末してきたという設定、目次の物語の数多さから、玲緒奈が次々と男を殺していく物語かと思いきや、2つ目以降はずっとクオンの語る物語が繋がっていたり入れ子細工だったり・・・という構成でした。
その構成の複雑さに、一つ一つの物語には惹き込まれつつ、物語が終わるたびに「この物語は以前の物語とどう繋がってるんだっけ」と何度も前に戻って確認しなくては納得がいかなくなり、少々時間がかかりました(ちょっとメンドクサイとも思ってました(^^;))。

星エネルギーの推進派と反対派の互いへの切り崩し工作を行うスパイたちの物語が、なんともやりきれなかったですねえ。
結局、どちらかが圧倒的に勝つということもなく、両方が存在して均衡を保って行くしかない、その争いのコマとなる彼らにもそれぞれの思いがあったり諦めがあったり・・・。
現実も、そんなことばっかりですもんねぇ。簡単に割り切れることの方が少ないかも。
なんかそれを思い知らされて、ちょっと痛かったりしました。

途中から、夜が異様に長くなってきたような気がします。
現実がファンタジーに飲み込まれてきたのではないでしょうか。
現実感を失っていく、玲緒奈の昼間の生活、クオンの物語に惹き込まれていく玲緒奈、とうとう玲緒奈は「自分も物語を語る」ということをクオンにそそのかされ、語ろうとするが・・・。
警察が、とうとうこの家を訪れる。玲緒奈は「私の話す機会が来た」とドアを開けに行く。

え?アレ?どういうこと?
捕まるよね?確実に。警察で「私の物語」を語るつもりなの?だとすると、それはクオンは聞くことが出来ないですよね?
ううむ…どういうことなのかしら?
ラストが、いまひとつわからなかったです。

そして、「聞き屋」をやっていたとはいえ、これだけ複雑な物語を語り広げていけたクオンって、スゴイと思いました。即興でこんな長い話を作れるなんて、頭がいいんだろうなぁと。そんな人が、なんで玲緒奈に結婚詐欺で騙されたんだろう。いや、騙されたかったのかもしれないなぁ・・・。玲緒奈の持っている物語への執着と、自分の聞きたい語りたい執着の相克を、感じ取ってたのかもしれませんねぇ。
ファンタジー、ホラー、ミステリ、サスペンス・・・色々なジャンルの物語が複雑に絡み合うのも、クオンの渾身の語りだったからでしょうね。千夜一夜物語っぽいといえば、そんな感じも(笑)。

(2020.10.31 読了)

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この記事へのコメント

2020年11月02日 15:41
星野智幸さん、よまれましたか。私は以前『俺俺』を。

『俺俺』も凄かったけど、相変わらず訳が分からない話を書いて居られるようで・・・。
たしかに「迷子になった(笑)物語」です。

http://blog.livedoor.jp/todo_23-br/archives/13030398.html
2020年11月03日 19:41
todo23さん、ありがとうございます(^^)。
そうなんですよぅ~。盛大に迷子になりました(^^;)。
「わからん、つまらん!」でもなく「わからん、でもまあいいや!」でもなく「わからん!でも惹き込まれる!」でした。
いやホント、物語でも迷子になり、ラストでも迷子になり、気持ちよく迷わせてもらいました(笑)。