『八咫烏シリーズ外伝 烏百花 ~白百合の章~』/阿部智里 ◎

たまたま同時に図書館の予約の順番が回ってきて受け取っていたのだけど、とりあえず本編である『追憶の烏』を先に読み、本書『八咫烏シリーズ外伝 烏百花 ~白百合の章~』 を後に読むことにしたんですよね。
・・・この順番で読むことにしてよかった・・・!!
私自身が、この順番で読むことにして、救われたと思います。
阿部智里さんの〈八咫烏世界シリーズ〉の外伝2冊めの本書は、本編で進行する苦い思いを払拭はできないものの、和らげホッとできる短編集でした。

「かれのおとない」
茂丸の妹・みよしから〈守る人の中に自分たちがいると思ってくれればいい〉と伝えられた雪哉。
「ふゆのことら」
私が大好きな(笑)市柳先輩の、やんちゃ時代。
「ちはやのだんまり」
目の不自由な妹・結が交際相手として連れてきた男に対して、だんまりな千早と代わりに対処する明瑠。
「あきのあやぎぬ」
西家の当主の正妻と側室たち。
「おにびさく」
西領の灯籠職人の矜持とそれを受け取った貴人。
「なつのゆうばえ」
大紫の御前の少女時代。
「はるのとこやみ」
東家の姫・浮雲の君を想ってしまった楽人の末路と、双子の兄の思い。
「きんかんをにる」
紫苑寺で暮らす姫宮を訪い、干し金柑を一緒に作る奈月彦。

どの物語もそれぞれに印象的でしたが、やはり「きんかんをにる」が、なんとも微笑ましくて、好きです。奈月彦と紫苑の宮が一緒に干し金柑を作っている姿にもほっこりしたんですけど、乱入してきて金柑を狙う浜木綿の気さくな感じが、この一家の温かさがとても伝わってきたのが、とても良かったです。ただ・・・、やっぱり『追憶の烏』を思い出してしまって、ちょっと切なくなってしまいましたけどね・・・。本当に、本編は、悲しいことになってしまったなぁ・・・と。

「ふゆのことら」の市柳先輩のやんちゃ時代(イタイ子ぶり)が、もう笑えて笑えて。きっと黒歴史なんだろうな~、オトナになった今では(笑)。〈風巻の虎〉と自称してたとか、羽織に虎を縫い付けてたとか(しかも自作)・・・!
挙げ句に、武芸大会でつい口を滑らせたことで雪哉(当時は弱虫のふりをしていた)に叩きのめされたという・・・。
『空棺の烏』で勁草院で同室だった雪哉と市柳先輩に、ここまでの因縁があったとは・・・!ますます市柳先輩のことが好きになっちゃいましたよ、ワタクシ。この時痛い目にあったからこそ、学院内での微妙な人間関係をうまく捌ける先輩に成長してたんですねぇ(笑)。

本編では完璧なまでの悪役だった大紫の御前の少女時代を描いた「なつのゆうばえ」が、意外なほど受け入れやすかったです。南家の姫として矜持を持ち、当主と分家の関係まで理解してその絶妙な権力感覚の中で生きてきた彼女が、たった一人の同類と密かに判明した弟への思い。それが、あそこまで捻じくれることがなければ・・・と惜しく思いましたね。だって、本当はとても賢い姫だったのだから。

同じ姫の話でも「はるのとこやみ」には、ゾワッとしました。浮雲の君は、何に心を砕いて生きていたのだろう・・・全くわからない。それに振り回された双子の楽人が、あまりにも哀れでした。本編で、娘のあせびの君がどういう役割を果たしたかを知ってしまった今、本当にこの母子の「底知れなさなのか、何も考えていなくて流されているだけなのか、あるいは当主に操られるがままになっているのか」というところが、理解できなくて、ゾッとしました。

奈月彦・雪哉・千早・明瑠といった政治武略のメイン登場人物だけでなく、西家当主の妻たちの団結力や大紫の御前の意外な過去、一介の職人の矜持(この物語の中にも大紫の御前が職人をきちんと評価できる者として出てくる)など、様々な身分の、様々な八咫烏たちが、それぞれの思いを持ってこの世界を生きている・・・ということが伝わって来る、素晴らしい短編集だったと思います。

(2021.11.14 読了)

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この記事へのコメント

苗坊
2021年11月14日 20:32
こんばんは。
自分のブログの方にも書きましたが、私はこちらを先に読んだせいかなぜか「追憶の烏」も短編集だろうという謎の先入観を持ってしまい、怒涛の展開に1回本を閉じました(笑)
こちらは安心して読めましたけど、同じく「はるのとこやみ」は嫌な読後感が残りましたね。流石あせびの母親…何を考えているのかわからな過ぎて怖かったです。本編の展開を考えるとなおのこと虫唾が走るというかなんというか…。双子の末路が可哀想すぎました。
「きんかんをにる」が最後でほのぼのしていて可愛かったです。ただ、それもあちらを読んでいると切なくて仕方がないのですが…
2021年11月16日 09:17
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
『追憶の~』とのギャップがすごいですよね・・・ホントに。
あれだけ過酷な人生の中にも、こんなほのぼのとした日々があったということは、生きる中での救いなのかもしれませんね。

今後、本編の進行はますます辛いものになりそうです。
本作のような、ちょっとでもホッとできるささやかな物語を集めた番外編、これからも出していって欲しいですね。