『弱法師』/中山可穂 ○

書評に「過剰な愛の果ては死さえ甘美」とあって読みたくなった、『弱法師』中山可穂の作品を読むのは、初めてだと思います。能の名作をモチーフに描いた三篇からなっていますが、能の知識はなくても、困ることは全くありませんでした。

「弱法師」
脳腫瘍に犯された少年のために、その母と結婚し、診療所を開く医師。母を死に追いやってしまった、少年。医師を残して、メール友達と心中を図る。取り残される医師。
「卒塔婆小町」
原稿を突き返されてくさる新人作家が墓地に迷い込むと、そこには伝説の女編集者がホームレスとなっていた。その女から、伝説の源となった、作家との物語を聞く。身を削ってまで、編集者への愛のためだけに作品を描く作家とその最期。
「浮舟」
私の伯母は、私を病弱な母の代わりに育ててくれた。母の死に際して、真実が明らかになる。母が愛していたのは父だけではなく、伯母もだったのだ。母と伯母の狂おしいまでの愛を知り、姉弟を等しく愛するというその苛烈な心の揺れゆえに母は病を重くし、それでも2人を愛したのだと知る、私。

3篇ともに、過剰な愛の果ての死を描いてる。息詰まるほどの、気も狂うほどの愛情が、死をもって昇華されるどころか、より濃密になっていく。・・・非常に、息苦しかったです。一気に読んで、眩暈がしそうになりました。こんな熾烈な愛は、私には耐えられない。

過剰な愛には共感できかねたが、どれも良かったと思う。あえて言うなら、「卒塔婆小町」が一番よかったかな。作家と編集者の苦渋に満ちた、お互いが向いているところの違う愛情の、狂おしさが鬼気迫って、感じられた。こういう、緊張感のある文章を書ける作家は、すごいと思う。

(2007.5.30 読了)

弱法師
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著者:中山可穂出版社:文藝春秋サイズ:単行本ページ数:293p発行年月:2004年03月この著者の新


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