『蘆屋家の崩壊』/津原泰水 ◎

夏ですな~。ぞ~っとする、怪談話が気持ちいいですねぇ。何故か妖物系を引き寄せてしまう体質?の三十路を越え未だ定職につけずにいる男・猿渡と、黒づくめの怪奇小説家・伯爵のコンビが巡り合う、ゴシックホラーじみた物語の数々。
私、津原泰水さんは『綺譚集』から読み始めてハマったので、こういうホラー系はイイ感じです。ゾクゾクして、細密な世界が広がってゆく・・・。ちょっとグロイかな~という気はしますが、この辺は各自の好みですよね~。

『蘆屋家の崩壊』はもちろん、言わずと知れたエドガー・アラン・ポーの『アッシャー家の崩壊』から来てるんですよね?・・・す、すみません。そっち、読んでないです・・・あぁぁ!またリスト入りか?!本格ゴシックホラーって、怖いから苦手なんですけど・・・小心者なんですよ!うう・・・。

猿渡と伯爵コンビの7つの物語、結構グロかったりするのに、割と読みやすかったです。たぶんね、猿渡のトホホ加減と伯爵の超越的存在が、いい中和剤になってたんだと思いますよ。その猿渡がまっとうに就職した揚句、恐怖の蓋を失って右往左往する「水牛群」はちょっと・・・苦しかったですね。ただ、ここで猿渡の物語が展開しそうな予感が。ここで終わりでもいいけれど、もっと広がってもいいようなこのコンビ。

「反曲隧道」
やたら一つの文章が長くて句点もないという、伯爵と猿渡の出会いの物語。ちょっと挫折しそうになった。けれども、この文章の長さは奇妙に、恐怖心をそそる。
「蘆屋家の崩壊」
猿渡が学生時代付き合った女の実家を訪れる、コンビ。蘆屋道満と、狐と、閉ざされた集落の秘密。そして、ラストに砕け落ちる「蘆屋家」。
「猫背の女」
猿渡が一度だけデートしたことのある、奇妙な女。病的なまでのストーキング。そして猿渡の右掌に付けられた聖痕。
「カルキノス」
読んで、蟹が怖くなっちゃったのは、小心者すぎますか?「蟹」という字が怖いという猿渡の気持ちが分かるようになっちゃったのは、マズイかな、やっぱり・・・。でもでも、確かにこの物語読んだら、怖いよ。直立して2メートルの蟹って!怖ろしすぎるがな!
有川さんの巨大甲殻類来襲!な『海の底』読んでも、エビは怖くならなかったのにな~。
「ケルベロス」
村の風習(土地神?)に対抗する、西洋帰化神主のケルベロス(地獄の番犬)像。失われなかったた双子の・・・。
「埋葬虫」
私には食虫習慣がありません。グロすぎます。しかも体内で繁殖って・・・、イ・ヤ・ダ~~!!とにかく一番生理的嫌悪が強かった・・・しくしく。怖すぎです。この話読んじゃったらもう、虫は食べられません。騙されて食べたりしたら、そしてのこの物語を思い出したりしたら発狂しかねないデスよ。
「水牛群」
恐怖感の蓋を取り戻すために、伯爵の伝説の取材に同行し、また妖物を引き寄せ、覚醒する猿渡。そして、伯爵もまた、スランプを乗り越えたようである。
もしかすると、伯爵から返された覚書を基に、猿渡は物語を描くようになるのではないか。

グロいながらも細密に美しい、世界。怪奇のそばには刹那的な美がある。そんな感じを受けましたね~。怖すぎず、でも真夏の怪談向けな、ぞくぞくする物語でした。

(2008.07.20 読了)
蘆屋家の崩壊
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著者:津原泰水出版社:集英社サイズ:単行本ページ数:238p発行年月:1999年06月この著者の新着


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