『雨の塔』/宮木あや子 ◎

家や一族の企業のために「使われ」る、妾腹の娘や訳ありな娘たちが集められている、全寮制女子学校。大学に当たるその四年間、全く外へ出ることが出来ず情報からも隔離される、陸の孤島。そこで出会った4人の娘たちの、美しくも儚く哀しい孤独。
・・・こういう雰囲気、すっごく好きだわ~。宮木あや子さんの世界に、どっぷりハマって読みました。

大学といわれながらも陰で「島流し」と称されるその学校は、巨額の寄付金を支払える財力の後ろ盾があることと、4年間幽閉されることだけが、条件。授業に出ることすら、強いられない。
だから『雨の塔』に住む娘たちは、お互い干渉することもなく、日々美しく世界から閉ざされて、生きてゆく。
儚く、少しずつ色を失って、美しくも壊れやすい、透明な水晶のかけらになるかのように。

世の中から隔絶される「学校」だけれど、その中には、学生たちがクレジットカード代わりの学生証を使って買い物をしまくる、小洒落れたダウンタウンすらある。だが、ファッション誌は各種取り揃えているのにニュース系情報誌は手に入らないし、電話は盗聴され、届く手紙や荷物は検閲されている。
自由に過ごしているかに見える娘たちは、厳重に管理されている。いつか一族の「政略結婚」に「使われる」ために、間違いがあってはいけないから。

心から愛した少女と心中未遂の末、世間の噂や当の少女から逃げるように入学した・矢咲実。実と同室で、父母から捨てられた元モデルの中国系ハーフ・小津ひまわり(モデル名リルファン)。巨大財閥のトップの愛人の娘・三島敦子。三島の奴隷と自称する、三島と同室の都岡百合子(リリコ)。
4人の娘たちは、お互い探り合いながら近づいたり、嫉妬したり、狂おしい思いを抱きながら、閉塞した世界を彷徨っている。
少しずつ狂ってゆく彼女たちと現実の関わりと、愛憎が深まる中、一つの転機が訪れる。
矢咲の事情が変わって、学校を出ていくことになったのだ。

小津は失踪し、矢崎の事情が引き金となって都岡も学校を出ることが出来るようになり、残された三島は絶望に泣くが、都岡は戻ってきて。

ああ・・・美しいなぁ。娘たち(少女でも女でもないその狭間の存在)の、研ぎ澄まされた容貌。群れ集まることのない、彼女たちのひんやりとした孤独。ポップなダウンタウンや無人バス。幻想的と言うにはファンタジー色がないが、現実感を削ぎ落として儚さだけを加えたかのような、静かな情景。
彼女らが関わりを持ったり想いを抱いたりすればするほど、その孤独が、透明度を増す。キリキリと胸に差し込む痛みは、彼女らのものなのか、自分の同調なのか。それすらも見失いそうな、脆く儚い彼女たちの現実が、狂おしかった。

表紙に描かれた、鳥籠の中にいる、矢咲・小津・三島・都岡の、類い稀な美しさ。それぞれが違った魅力のある美貌を持っている、そのイラストも素晴らしいし、目次や奥付に描かれている蔓性植物や蝶の挿絵も繊細で美しい。
表紙のやや暗い色目の浅葱色も、私の好きな色だ。
つまり、とにかくぴったり好みに合うのだ。物語も、装丁も、挿絵も。

『花宵道中』も、すごいと思ったけど、宮木さんは、いいですね!他の作品も、もっと読みたいです。
そして多分、またこんな風に感傷的な長い文章を、書いちゃうんだろうな・・・。

ちなみに。
4人の娘たちの中で、一番好きだったのは小津かな。アジアンテイストな容貌・凛としたプライドを持ちつつも、4人の中で一番揺らいでいた存在感、すごく魅力的でした。
反して、矢咲はちょっと・・・わかりにくかった。あれだけ「小津が必要だ」と言っていたに、あっさり出ていってしまうなんて。西洋の美少年のような顔立ちも・・・あんまり好みじゃなかったしなぁ。

(2008.11.05 読了)
雨の塔
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著者:宮木あや子出版社:集英社サイズ:単行本ページ数:162p発行年月:2007年11月この著者の新


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