『とりつくしま』/東直子 ◎

ううむ・・・。いかん・・・。
「ハートフルファンタジー」な評判の方ばかり覚えてて、「死んだ人がものにとり憑く」という根本的な設定をすっ飛ばして読み始めてしまいました。
そして・・・泣いてしまいましたよ。・・・く、くそう。ダメなんだようぅ~こういうの。
逝く者、残される者、お互いの未練というのが全部、私自身の覚悟のなさへ跳ね返って来てしまうんですよねぇ・・・。あ、いえいえ、辛い涙だけじゃないんですよ。なんか、心暖まるなぁ・・・て言うのもありました。

番外編1篇を含む、11篇の「死者の視点」。愛する家族の物、好きだった場所にいた人の物、様々なものに死者たちはとりつく。とりつくだけで、見ているだけしかできないんだけど。
東直子さんは、歌人さんなのですね。言葉の選び方が綺麗です。いやな表現が一切ない。ふわりふわりと、温かい言葉で語られる、死者の視点。
『とりつくしま』というタイトルがひらがななのも、優しい感じがします。その優しさが、泣けてしまう。

一番最初の「ロージン」からして、もうダメだ・・・。子供の野球の試合のロージンバックの中の粉になりたい、長くいるとあとで辛くなるから・・・、なんて。私だったら、半永久的に家族のそばにいられそうなものを、考える。夫の眼鏡なら、少なくとも当分は一緒にいられる・・・、ああ死ぬ前に夫に眼鏡を変えないでと頼まなくちゃ、とまで考えてしまったほどだ。未練がましいことこの上ない自分と、主人公の私を比べて、後ろめたい気持ちになった。
しかも、試合の最後を見届けることが出来なくても、子供が頑張ったんだからいい試合だった、って言える、その清々しさ。羨ましい・・・きっと自分には無理だろうなぁ。

家族ものが、どうにも悲しくて、羨ましくて、いたたまれなかった。4歳の子供が「青いの」にとりついたり、妻の日記にとりつく「日記」、夫のマグカップにとりつく「トリケラトプス」・・・。残された家族のその後を見守るだけの、声をかけることも心に伝えることもできない、その歯がゆさは、なんだかとても、辛い。辛いけれど、だんだんに残された家族が快方に向かうのが分かったら、嬉しい。

物語を読んで泣いた後に残る清々しさと、自分の中にある未練の確かさは、両立するのですよね。
未練があってもいい、誰でもいつかは死ぬけど、逝くか残されるかするけれど、それは致し方ないのかな・・・と。覚悟はできない。私には無理だ。それでもいいのかもしれないな・・・なんて、全然物語と反対方向なのに、納得してしまいました。

(2009.06.16 読了)

とりつくしま
楽天ブックス
著者:東直子出版社:筑摩書房サイズ:単行本ページ数:201p発行年月:2007年05月この著者の新着


楽天市場 by ウェブリブログ



"『とりつくしま』/東直子 ◎" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント