『死ねばいいのに』/京極夏彦 ○

相変わらず、挑戦的だよなぁ京極夏彦さんて(笑)。
『死ねばいいのに』って、ホントすっごいタイトルじゃありませんか、ねぇ。なにもそんなにあからさまに言わなくても・・・と鼻白みつつ、読了してびっくり。
ははぁ~、へぇ~、そうなんだぁ。ていうか、京極さんて、ホントにオソロシイ作家さんだなぁ。
面白いというか、後味が悪いというか、どう表現したらいいのか・・・。

とある派遣OLが殺された。数カ月後、その女の事を知りたいと、若い男が関係者を訪ねて歩く。
関係者たちは、その男・ケンヤ(渡来健也)をいぶかしみながら、殺された女・鹿島亜佐美について話し始めるが、いつの間にか話は亜佐美と自分の関係ではなく、自分の置かれた状況に関する不平不満、自分が不幸であるという愚痴話になっていく。
そこでケンヤは彼らに言い放つのだ。
~~――― 死ねばいいのに。~~ (本文より引用)
と。言われた者たちは狼狽する。そして、いやいやそれはその、と言い訳を始める。が、ケンヤは「もういいや、アンタ亜佐美の話してくれねぇし」と去っていく。
そして5人目の関係者のところで、ケンヤは重大な事実を申告し、6人目にそのことについて執拗に聞かれるのだが、やはり話は脱線していく。
そして、亜佐美の話に、戻って来た時、何故健也が亜佐美を殺したのか、どうして傍目不幸な亜佐美が幸せだと言ったのか、なのに何故死にたいと言ったのかが分かる。

今時の、いい加減で定職にもつけないような若者・ケンヤが、率直過ぎる物言いで関係者たちをイラつかせる。関係者たちが濁そうとする事実を切り裂いて、彼らの欺瞞を暴いて見せてしまう。その欺瞞は割と普通にあることだが、やはり本人達は気付きたくないこと。
醜いなぁ、人間て(笑)。いやいや、私もそういう欺瞞はいっぱい持ってる。公明正大な人間って、いないもんだな、と気づかされる。そういうところが、京極さんのオソロシイところですなぁ。

内容に触れようかと思ったのですが、今回はやめときます。なんか、支離滅裂になりそうなんで。登場人物たちの〈醜さ〉が自分と重なるので、嫌な気分になるしなぁ(笑)
しかし、本作ですごいなと思うのは、衝撃的なタイトルだけじゃないんですよね~。
5人の人間が、亜佐美という女について聞きに来たケンヤという不躾な若者と対話しながら、その心情が少しずつ漏れて感情的になっていく(6人目に関しては、ケンヤに話を聞きに来たので逆の立場なのだけれど、結局同じ展開)。
ケンヤと対話する相手の2人がいて、ただひたすら対話と相手の心情だけが描かれているだけ。なのに飽きない。
タイトルと同じ「死ねばいいのに」のセリフがいい放たれる瞬間、思わず自分に言われたのではないかと、どぎまぎする。
そして、ケンヤが一番最初に言った「死ねばいいのに」が、どんな引き金を引いたのかが分かった時、ぞっとした。

うぉぉ~!京極さん、凄すぎ!なんていうか、ホントに色々とすごい人だなぁ。
凄すぎて、作品数も多くて、追い切れてないけど(笑)。ぼちぼち、追い掛けて行きたい作家さんです。

(2011.08.04 読了)


死ねばいいのに
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京極夏彦 講談社発行年月:2010年05月 予約締切日:2010年05月08日 ページ数:397p


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