『臣女』/吉村萬壱 〇

いやあ・・・、感想、とっても難しいんですけど。
巨大化しつつある妻の介護をしつつ、結局悪循環の末に逃亡・・・なんて物語、予想通り過ぎるのに、それでもグイグイ読まされちゃったんですもん。
吉村萬壱さんという方は、初めて読みました。って、芥川賞とった作家さんなんですね!失礼いたしました・・・。
巨大化する妻を「巨女」と書こうとして『臣女』と書き間違えた主人公ですが、「おみおんな」という音は妙に呪文じみてる感じがします。

高校の非常勤講師をしながら、著作活動(でも売れてない)をしている主人公は、読者である女と情事を繰り返していた。それがきっかけだったのか、母との嫁姑問題がもともとの温床だったのか、ある日から妻の巨大化が始まる。
妻の体はあちこちが変形し痛みを伴い、意識も混濁したりはっきりしたり、マシな状態と不調を行き来しつつ、少しずつ巨大化する。
大きくなれば食べる量も増え、糞尿の量も増えるのでその始末に追われ、臭いと文句を言いに来る近所の老人をいなそうとするもしつこく付き纏われ、同じ高校に赴任してきた同僚講師にもいろいろと絡まれる。
妻は病院には行かないと言い、夫の介護は果てしなく続く。勿論、家計を圧迫する食費、糞尿や体液の処理に伴う匂いのひどさ、近隣や同僚の詮索など、主人公を悩ませることは多々あるのだけど、どうすることもできないまま悪循環に陥っていく姿を見るにつけ、もどかしくなる。

とはいえ、当局(?)に妻を渡すことは出来まい。病院に連れて行くなら、初期に行くべきだった。放置して、問題を先送りにし、介護疲れの状態で浮気相手に会いに行って拒否されたり、同僚講師と喧嘩をしたり、主人公もだいぶ疲弊しておかしくなっている。

後半、もう家にもいられなくなり、逃亡を図った時点で「ああ・・・もうこの物語に救いはないな」と思って、ちょっと切なくなりました。
逃亡を図った当初は、なんとなく幸せな感じだったんですけどね。
ああいうラストを迎えたのは、なんというか予想通りだったのに、逃げ切れたらいいのにあるいは二人でどうにか…という期待を持ってしまった自分を、思いっきりぶちのめされた気がします。現実ってやっぱり甘くないんですよねぇ・・・。

家の悪臭がひどすぎて消防と市の環境衛課が来たところで、環境管理課の人間が「極めて稀なケースであれ前例がないわけじゃない」「回収される」「多分処理される」と主人公にそっと告げる。
・・・前例がないわけじゃないんだ・・・。一番、衝撃的でしたね。
そして思い当たったのが、主人公の同僚の木村氏。彼の抱える闇は、もしかすると彼も「身近な人を回収・処理」されたのかもしれません・・・。物語の最後の方で木村氏の名前がちょっと出てきたし…。

奇形巨大化する妻、いたわり介護しつつも被害者感をうっすら持ってしまう夫、それでも二人の間に流れる「情」は、「愛情」だったんだろうと思いますね。まあ…私はそういう愛は、出来るだけ勘弁して欲しいですけど。すみません、小市民なもんで。

切ないというか、ぶちのめされ感というか、いろいろ後悔が押し寄せる読後感でした。
それとは別に、「回収・処理」の物語ってどんなだろうという興味がわいたりもして。「回収・処理」された「巨大化してしまった人」や、その作業に携わる人たち、身近な人を引き渡してしまった人の逡巡や後悔や安堵など、物語には事欠かなさそう。
とはいえ、グロくて苦しくて、読むのがつらくなってしまうんだろうな、きっと。

(2018.09.21 読了)

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