『異人館画廊 ~失われた絵と学園の秘密~』/谷瑞恵 〇

絵画に対する感性の鋭さや両親の養育放棄からイギリスへ留学し、スキップで大学で図像学を修めた此花千景は祖父の死後帰国し、祖母の営む「異人館画廊」で暮らしている。
千景も一員である稀覯絵画鑑賞グループ・キューブのメンバーが関わる、図像が使われているという絵画にまつわる事件を描く〈異人館画廊〉シリーズ。5冊目にあたる本作『異人館画廊 ~失われた絵と学園の秘密~』は、調査のため美術高校に編入した千景が、同年代の少年少女と関わることで影響を受け、頑なな心を少しずつ和らげていく。
ところで谷瑞恵さん、千景の誘拐事件の真相はいつ語られるんでしょうか?!その日が待ち遠しすぎるんですが!!

本編で時折触れられる、千景の幼少時の誘拐事件。事件そのものの記憶がほとんどなく、それ以前のことも曖昧な記憶しかない千景は、当時仲良くしていたはずの透磨に対して苦手意識があった。その気持ちから突っかかることもしばしばあり、透磨の方も千景が過去を思い出すことで傷つくことを恐れて、千景に対して距離の取り方を逡巡している。
5作目ともなると、「むかつくわ」と言いながらも頼りにしている様子が、だんだん緩やかに描かれるようになってきてはいますが、なかなかこの二人、難しいですねぇ。2人とも、頭が良くてプライドが高いから、相手の反応や自分の気持ちの揺れを考えすぎてしまってます。素直になればいいのに・・・と思っちゃいます、オバチャン。

呪いの絵を描けるという噂の女生徒が、美術室の窓から転落した。彼女がコンクールに応募するはずだった作品が行方不明となり、彼女が入院中に学園内で「呪いの絵を見て気分が悪くなった」という騒ぎが起きる。学園長から真相解明を依頼された千景たちは、学園に潜入し調査を始める。

いやあ、表紙に千景と透磨がいたので、てっきり透磨も先生役か何かで潜入するのかと思ってました。さすがにそこまでベッタリというわけにはいかなかったんですかね(笑)。まあ、養護教諭として潜入した瑠衣から連絡が入れば、すっ飛んでいくって時点で過保護というか心配症は発揮されてますが。

ヨーロッパの美術館で、図像術を使ったとおぼしき絵を見てしまい、それ以来憑りつかれたように絵を描き続けた山際由美。意識不明のまま入院する彼女や、彼女の描いたはずの絵について調べるうちに、千景は有紗という少女と友達になったり、由美にちょっかいを出していた裕也という少年に連れ回されたり、高校生らしい人間関係を体験する。それを見てヤキモキする透磨がおかしかったですね~。ヤキモキしつつも多分「同世代とのたわいない関わりも彼女に必要なことなのではないか」とか、葛藤してたんでしょうねぇ(笑)。

キューブの謎のメンバー・カゲロウさんが、あっさり千景に正体を明かしてしまったのにはビックリ。透磨・千景以外のメンバーにはまだ、内緒のようですが。カゲロウは、千景の幼少時を知っているような描写が前作にもあったし、千景とは同年代でこれから仲良くなりそうな気配、透磨としては気が揉めて仕方ないでしょうなぁ。千景を巡る人間関係がより発展して、今後の展開が面白くなりそうです。

図像術を完全に複写できた由美(ただし転落のショックで絵画に関する記憶を失っている)、かつて6つに分けられた図像を自分の頭の中で構築することが出来た千景。現代では図像術を使った絵を再現あるいは新たに描きあげることは出来ない、という通説が覆りそうなエピソードが物語のラストにそっと描かれています。
千景の父の危惧も、あながち間違いではないのか?千景自身に悪意がなくても、それを利用しようとする人間はいくらでもいそうだから。でも、そんな悪意から彼女を守るためにキューブのメンバーがいるのではないかな、と思ってます。もちろん、周りに守られるだけでなく、千景自身もその悪意と戦う意思はあると思います。

そういえば、千景の父のことは多少分かってきましたが、母親のことはほとんどわからないですね。前作『異人館画廊 ~当世風婚活のすすめ~』で、成瀬家に出入りしてた時期があった、というぐらいで。千景の父との不仲は顕著で、離婚後、千景の親権を放棄。今後ストーリーに関わってくることがあるのかどうかも分からないぐらい人物像が曖昧で、逆に怖いですね。なんかありそう・・・。

(2019.05.07 読了)

水無月・Rの〈異人館画廊シリーズ〉記事
『異人館画廊 ~透明な絵と堕天使の誘惑~』

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